商品や原油市場のバブルをたたえるべき理由

今日はやっと下げましたね。TOPIXは-1.43%でした。しかし、明日以降の相場の見通しがわかりません。原油価格の急落、円安、ヨーロッパ市場の高騰は、なにを意味するのでしょうか?単純に考えれば、投資家がリスクを取れるようになってきたので、コモディティーから株に資金をシフトしているように見えます。円キャリー復活に伴う円安はそのためでしょう。そうすると、今夜の米国株は上昇。明日の日本株は、コモディティーの値下がりにより製造業上昇。インフレ期待の後退により金利引き上げ期待も後退し、長期金利低下。結果、銀行株は下落(とはいえ、債券を売って株を買う動きもでますので、金利はそんなに下がらないかもしれません)というのが、普通の考え方でしょう。しかし、なぜかそうならないような気がしてます。。

今日も記事の紹介です。価格と投資についての関係がわかりやすく書かれています。需要増加による価格高騰は、増産のための投資をもたらし、数量増加を招き、需要と供給がマッチすることにより、いずれ価格は下落するという当たり前の話です。しかし、天然資源の場合は、投資から実際に増産が始まるまでの期間も長く、取りやすいところには、ほとんど無いものを探すので、限界的な投資は、どんどん多くなる必要が出てきます。当分、資源高騰は続きそうです。

【経済コラム】商品や原油市場のバブルをたたえるべき理由−リン
2008-05-27 22:59 (New York)

【コラムニスト:Matthew Lynn】
  5月28日(ブルームバーグ):いま自動車にガソリンを補給している人は誰でも原油に投資する投機家たちをのろっていることだろう。ショッピングカートに家族のための食料品を積み込んでいる人たちも、小麦やコメなどの食糧の価格を高騰させたヘッジファンドマネジャーらに対して怒りを感じているかもしれない。

原油や商品、食糧の価格はここ数カ月間、爆発的に上昇している。相場高騰の確固とした基盤はあるものの、商品ブームはいま、バブルに移行している。相場は、ファンダメンタルズ(需給関係)で正当化し得る水準をはるかに超えて上昇し始めている。そして予想通り、相場を押し上げている金融市場に対する反動も現れ始めている。

われわれは、投機家たちをそっとしておくべきだ。世界の人々は、原料の利用方法を大胆に変える必要がある。政治家たちは変化を実現させることに非常に及び腰だ。政治家たちの代わりに市場がその役割を果たしている。バブルが人々のエネルギー消費の在り方を変化させるきっかけになれば、それでいい。

原油相場は現在、1バレル当たり130ドルを超えている。相場が近い将来、急落すると予想する者は誰もいない。むしろ、さらに上昇する可能性もある。米ゴールドマン・サックス・グループのアナリスト、アージュン・マーティ氏は、相場が200ドルに達する可能性があるとの見方を示した。原油相場は過去3年間、上昇しているため、200ドルに達することはないと見込むのは、投資家にとって勇気がいるだろう。

原油をめぐるこのような状況は、他の多くの商品にも当てはまる。銅と鉄は過去数年間高騰している。小麦、トウモロコシ、コメ、大豆もことし、軒並み過去最高値に達した。コメは一時、最高値の100ポンド当たり25.07ドルを付けた。このようななか、ハイチやエジプトでは暴動が発生。一部の人々は飢えてしまうかもしれない。

インドの取引禁止

当然、このような状況は、投機筋に対する措置の導入につながっている。インドは今月、価格上昇を抑制するため、大豆油やジャガイモ、ひよこ豆などに食糧先物の取引禁止を拡大した。また、米上院の国土安全保障・政府問題委員会のジョゼフ・リーバーマン委員長は、大口投資家が保有する商品の持ち高を制限する法律を制定する必要があるとの見解を示した。

ドイツでも多くの人々が同様の動きを示そうとしている。独農業協会のゲルト・ゾンライトナー会長は今月、「食糧価格上昇の最大の要因は金融投機筋による投資だ。このような場合、投機筋は実にイナゴの大群のようなものだ」と述べ、「イナゴたちはコメや牛乳、人々のことは気に掛けない。相場の変動率だけを気に掛けている」との見方を示した。

ある意味、「イナゴたち」と呼ばれるヘッジファンドは正しいことをしている。石油輸出国機構(OPEC)のバドリ事務局長は今月、投機筋は原油相場の高騰において「重要な役割」を果たしていると指摘した。商品や食糧の相場にとっても同様のことが言える。

熱狂的な買い

OPECが、投機筋による投資は悪い事であると考えるのは間違っている。その理由はこうだ。まず、原油は増産する必要がある。国際エネルギー機関(IEA)は、世界の原油消費が2015年までに日量9850万バレルと、06年の同8460万バレルから増加すると予想。30年までには同1億1630万バレルに達するとみている。これだけの量の原油を確保するため、探査や生産、精製、流通が拡大すると見込まれる。これほどの規模の投資を動員するための方法は一つしかない。相場が高騰し、原油資産の熱狂的な買いがスタートすることだ。

次に、先進国は燃料効率の向上に取り組む必要がある。中国やインドが欧州や米国と同様の量の原油を消費し始めても、供給がさらに必要となることはないだろう。豊かな国々での消費が後退する必要がある。気候変動に対処するためには、大気汚染度も低下させなければならない。

行動の変化

これを実現させるためには、行動を変化させなければならない。つまり、ガソリンを大量に消費するスポーツ型多目的車(SUV)をハイブリッド車に切り替える。最長1000マイル(1609キロメートル)の距離を移動する標準的な輸送手段を飛行機から高速列車に変更する。住宅はエネルギー消費量をより少なくするよう設計を改善する必要がある。太陽光発電風力発電による電力の利用を増やすべきだ。

これらすべてを実現するには費用が掛かり、大変だ。政治家たちは実現に向けて税金を課すことに対して非常に神経質だ。原油相場が50ドルや100ドルの水準では実現しないだろう。SUVをスクラップ業者の所に運転して行くことになるのは、相場が200ドルに達した時だけだ。

最後に、農業政策を変更する必要がある。インドや中国が欧州や米国同様に豊かになれば、世界の食糧需要は大幅に増加する。つまり、農業経営の方法を変える必要がある。少なくとも欧州では、増産よりも農業や景観の保護が優先されている。肥沃な土地が多く、人口が減少しているドイツのような国々は、主要な食糧輸出国に転換するべきだ。ただ、価格がかなり大幅に上昇しなければ実現しないだろう。

行動を変化させるためには常に、システムに大規模なショックが与えられる必要がある。それがまさに、商品市場の投機的なバブルがもたらしているものだ。それは美しくも心地良くもないかもしれないが、市場が行っていることだ。だからこそ、われわれはバブルをたたえるべきである。非難するべきではない。(マシュー・リン)