日本の優秀な経営者

株式相場は、全く方向感がありませんが、やはり下落局面だと思います。原油も、米国が金融引き締めを行うと考えるとやはり下落だと思います。ときどき思うのですが、通貨とコモディティと株式を分けて考えてはいけないと思います。3月のドル安と原油高と株安は、金融不安により米国株を売りたい局面で、米政府が金利を低下させたため、お金がじゃぶじゃぶになった投資家がコモディティに逃げた結果だと思います。ドル安のせいで、原油が上がったと分けて考えるべきではないでしょう。

さてさて、今の日本に本当に必要なのは、小泉純一郎と起業家です。今回のブルームバーグのコラムでは、ソニーの出井さんを取り上げていますが、日本には優秀な経営者は、まだまだいます。東京製鉄の池谷正成元社長、住友金属工業の友野宏社長は、尊敬に値します。このような経営者がもっと評価されるべきだと思います。日本の未来のために。


【経済コラム】日本のパラドックス:重鎮が革新を担う−W・ペセック
2008-07-04 04:19:15.460 (New York)

【コラムニスト:William Pesek】
7月4日(ブルームバーグ):国のイノベーション(革新性)や競争力を伸ばしたいと思ったら、出井伸之氏の知恵を拝借するのも悪くないかもしれない。

ソニーの出井前会長兼最高経営責任者(CEO)は、日本で正式にそうした役割を担っているわけではない。70歳という年齢を考えると、日本の硬直した企業文化と技術の未来をつなぐ懸け橋役としては不自然かもしれない。大体、インターネット社会となった米国なら、グーグル創業者よりはゼネラル・エレクトリックのCEOを務めたジャック・ウェルチ氏と同世代の男の意見に耳を傾けるだろうか。

しかし年功序列の日本で真剣に受け止められるためには、出井氏ほどの重々しさが必要となる。同氏はこの国の将来形成に向けて、コンサルティング会社のクオンタムリープを立ち上げている。

もちろん、ソニーは米アップルに後れを取るなどかつての栄光を失い、出井氏がソニーを率いていた2003年4月には株価が2日間で27%も下がるソニー・ショックに見舞われ、同氏は05年にCEOを退いた。それでも日本人のマインド形成に果たしたソニーの役割は大きい。米国人の多くがフォード創設のヘンリー・フォード氏や米マイクロソフトビル・ゲイツ氏に抱く感情は、日本人がソニーを共同で創業した井深大氏や盛田昭夫氏を思う気持ちと一緒だ。両氏が1946年に創設した会社が前身となったソニーは、日本の戦後復興の象徴なのだ。

出井氏は2年前に立ち上げた同氏の会社名に量子力学の言葉を選んだ理由について、「日本にはクオンタムリープ(非連続の飛躍)が必要だ」と説明し、「これまでの1世紀、日本は成功の象徴だったが、この国はいまだ1990年代のままだ。つまりインターネットが大きな力となる前の段階だ」と語る。

愛のむち

日本に関する強気派は聞きたくないような強い言い方かもしれない。しかし出井氏の主張は、日本に対する根拠のない批判というよりは愛のむちの性格が強い。ソニーはもうハワード・ストリンガーCEOに任せてあるので、出井氏は日本の将来を考える。1億2700万人の人口を抱えるこの国で、雇用を創出し競争力を向上させる新規産業につながるイノベーションを起こしたいのだ。

矛盾をはらんだ話だ。特許数に基づけば、日本は最も革新性に富んだ国として挙がることも多いからだ。しかし、特許の大半は大企業に集中しており、これまでの発明に改良を加えたたぐいのものが多い。日本に欠けているのはアップルを共同創業したスティーブ・ジョブズ氏のような企業家だ。状況は変わりつつあるものの、依然としてイノベーションは大企業に集まり、ベンチャー企業の創設は十分ではない。だからグーグルや米ヤフーのような企業は日本で生まれなかった。

出井氏がやろうとしていることは注目に値する。ベンチャーキャピタルが米国に比べて微々たる存在のアジアで社会的な障壁を打ち砕こうとしている同氏は来週、福岡市で第2回アジア・イノベーション・イニシアチブ(AII)を主催する。同会議はアジア地域の新たな企業家によるビジネスを育てる方法などを考える場だ。この会議ではアジアでこれまで見過ごされてきた投資機会も取り上げられる予定で、原油収入に潤う中東地域からの参加者も見込まれる。出井氏はアラブ首長国連邦(UAE)ドバイの政府系投資会社ドバイ・インターナショナル・キャピタル(DIC)が組成したファンドのアドバイザリー・ボードのメンバー。

緊迫するアジアの状況

商品の値上がりで、アジアの状況は一段と緊迫している。CIBCワールド・マーケッツのジェフリー・ルービン氏のようなエコノミストの見方が正しければ、原油相場が1バレル当たり200ドルに向かうなか、輸出で成り立つアジアの将来は危ない。輸送コストが上がって輸入が割高になれば、米国の製造業はアジアから退いて自国近くに拠点を移すとルービン氏はみる。

アジア繁栄に向けた最大の希望は技術と革新にある。出井氏は、旧態依然の経済に起きているコスト変化が新しいタイプの経済チャンスを受け入れる切迫感をアジアに与えていると主張する。世界はそうした環境下にあり、「アジアが協力する非常に重要な時期だ」と語る。

出井氏は日本においては民間企業に対して年功序列型システムをやめて能力主義を採用し、業界内の統合を加速するよう促し、ベンチャー企業を資金面でも支援しようとしている。簡単に言えば、日本版シリコンバレーだ。

自由民主党は1955年以来、1年を除いて日本の政権を担ってきたが、その経済モデルは低金利と多額の政府債務、円安だ。税制を企業家や新規事業創設を後押しするように変える圧力は民間から起こす必要がある。

出井氏のようなビジネス界の重鎮に期待するような役割ではないだろう。しかし、アジアの将来を見据えた動きを加速する努力はエネルギーを使うに値する。
(ウィリアム・ペセック)