金融業界におけるジャーナリズム

海外のジャーナリズムの方が、日本よりはるかにレベルが高いという話はよく聞きます。自分は、ジャーナリズムには、造詣が深いといは言い難いので、断言はできませんが、ブルームバーグのコラムは見る限りでは、同意してもいいように思います。

北朝鮮、福田政権、中国の毒入り餃子を、経済や政治のトップに扱っているようでは、日本のマスコミはだめでしょう。残念ながら、世界は誰も注目していません。身内で勝手に大騒ぎした結果は、大山鳴動して鼠一匹でしょう。中国の聖火リレー論争を見ればわかります。やはり、いつの間にか消えていました。

郵貯銀行の保有している国債はどうなるのか?郵貯銀の上場で、そのスタンスに変化はあるのか?つまり、政府はどのくらい売却するのか?GPIFの今後の運用方針は?少子化対策で、移民を導入するのか?こういったテーマの方が、より重要で、世界からも注目されているのではないでしょうか?


【コラム】おじいさんの昔話、資本主義はどう自殺したか−ギルバート
2008-07-10 15:20:07.180 (New York)


【コラムニスト:Mark Gilbert 】
  7月10日(ブルームバーグ):「ねえ、おじいさん、資本主義が自殺したって本当?」

  2006−07年の「年代物」住宅ローン担保証券を暖炉にくべていた老人は顔を上げた。「先進国では銀行家たちが欲張りになり過ぎて、人々はお金を借り過ぎた。発展途上国では皆が生活水準を上げようと競争して、眠っていたインフレという怪物を起こしてしまったんだよ」

  少年は地面に絵を描いていた棒切れを置いて尋ねた。「でもどうして、『2008年のジグロブブ』(ジャイガンティック・グローバル・バブル・バースト=世界巨大バブル破裂)が近づいていることに誰も気付かなかったの?」

  「後になって考えるとね、水の値段で気が付くべきだったんだよ。ジグロブブの前にはタスマニア産のボトル入り水が1リットル15ドル(約1610円)になっていた。アジア開発銀行はアジアの7億人が飲料水不足に悩まされると警告したんだ。投資銀行は水不足に賭ける証券まで作り出した。なのに、『水戦争』が起こることは誰にも予測できなかったんだ」

  「キプロスがまずギリシャから水を買い始めた。スペインではエブロ川からバルセロナに水を引くことにした」

  「ジグロブブの前も、人は飲み水のために雨水を集めていたの?」少年は尋ねた。「おじいさんは朝のコーヒーの分の水がないと機嫌が悪くなるけど」「そういう人もいたけど、金持ちはミルク入りのコーヒーを買っていたんだよ。コーヒーを売るスターバックスという会社はたった4年で2倍の規模になった。だからその会社が米国で600のコーヒー店を閉めると言ったときには、賢明な人たちが心配し始めたのさ」

牛乳と冷蔵庫

  「ミルクといえば、これもヒントだったな。中国の数百万人の市民が冷蔵庫を買えるようになったとたんに、みんなで牛乳を買い込んだんだ。冷蔵庫のために電気代が上がり、牛乳の値段も天井知らずになった。ほかの食べ物もね。インフレが眠りからさめて、債券市場を乗っ取ったんだ」

  「中央銀行というものが経済の責任を負っていたんじゃないの?」
  「独立性を持った中央銀行が経済を運営するシステムは好調期にはうまく機能していたが、事態が悪くなると全く駄目だということが分かったんだ。政府があっというまに金融政策の権限を取り返してしまった。でもインフレ高進、成長減速のなかでそれは事態を悪くするだけだった」

  「インフレが資本主義を殺したの?」
  「資本主義は自分で滅亡の種をまいたのさ。10年も続いたブームの成果を資本家が独り占めして労働者に配分しなかった。その挙句、ブームが最悪の形で終わったときは、今度は労働者に持ちこたえろというわけだ」

  「人々は、共産主義が倒れたからといって資本主義が勝ったわけではないことに気付き始めた。資本主義の悪いところが見え始め、ニュージーランドでは鉄道とフェリーが国有化された。運輸システムを運営するのは民間企業より政府の方がいいと考えたわけだ」

金本位制

  「そして、資本主義の最高の成果の1つだったユーロが駄目になった。アイルランド国民投票で3回続けて欧州連合(EU)の協約を拒否し、他のユーロ圏メンバーはアイルランドを除名することにしたんだ。ドイツとフランスはもともと望んでいた中核メンバーだけのユーロ圏を作るのは簡単だと気付いて、まずイタリアから追い出し始めた」

  「銀行と住宅金融業者が政府の救済が追いつかないペースでつぶれ始めると、誰かがインターネットで『金本位制』に戻ろうと言い始めた。一群の学者が『不換紙幣』は駄目だと同意し、紙幣への信頼は完全に失われたんだ」

  「自然界にも何か悪いことが起こったんじゃない?」
  「イナゴの大群のせいで中国は2008年の北京五輪を中止せざるを得なかった。ミツバチが死んで、ペンギンとイルカの集団自殺が始まった」  「だから、世界の終わりとその後について、ピュリツァー賞作家コーマック・マッカーシーの『ザ・ロード』という本が出たころには、皆が怖気づいて腹を立てていた。そして、この作家を崇拝するカルトが次々に生まれたんだ」

  暖炉の明かりの中で少年のまぶたが重くなり始めたのに気付いた老人は言った。「さあお休み、バーナンキ君。この洞窟にいれば朝までは安全だ。明日は海岸を目指そう」
(マーク・ギルバート)