GM救済問題と投資銀行

GMの救済問題を考える上で重要なのは、やはりGMが付加価値を生み出す会社であるかどうか。要はトヨタやホンダよりも、いい車を作る可能性があるかどうかでしょう。現状では、かなり厳しそうです。
さて、銀行となった投資銀行が、世の中に付加価値を生み出しうるでしょうか?そもそも、今まで、付加価値を生み出していたのでしょうか?かなり怪しそうです。


【コラム】ビッグ3究極の救済策:この方々に登場を−M・ギルバート
2008-11-20

【コラムニスト:Mark Gilbert】11月20日ブルームバーグ):今月、セーリングで有名な米メリーランド州アナポリスを訪れた際、カフェの窓から見える駐車場の車をチェックしてみると、「ホンダ、ホンダ、日産、トヨタ、ホンダ、トヨタの『レクサス』、マツダ、おんぼろの70年代『キャデラック』」といった具合だった。   
これでは米自動車メーカーが破たんにひんし、財務省に「生命維持装置」を嘆願するのも無理はない。   
だが、だまされてはいけない。米自動車産業に巣食う腐敗は現在の信用収縮とはまったく関係がなく、長年にわたる経営の失敗や質の悪い製品、間違った選択に起因しているのだ。   
ゼネラル・モーターズ(GM)とフォード・モーターの信用格付けの変遷を振り返ってみよう。最初に変調が見られたのは、両社が約10年間維持してきた「A」格付けを米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が引き下げ方向で見直すと発表した2001年8月だった。同年10月、両社の格付けは「BBB+」に2段階引き下げられた。これは投資不適格級を3段階上回る水準。   
従って、生産方式を改善し信頼性を向上させた日本のメーカーが着々と市場シェアを拡大した一方で、7年前には既に米メーカーは下降傾向に入っていたのだ。「信用収縮」という言葉が極めて日常的に使われるようになる、はるか前のことだ。
嘆願よりも辞表を   
GMとフォードの格下げはその後も続いた。05年5月にS&Pはとうとう両社の格付けを投資不適格級に引き下げた。その2年前に起債されたGMの30億ドル(約2870億円)の社債(表面利率8.375%、2033年償還)の価格はその時までに26%下げていた。現在までの下落率は80%余りとなっている。   
GMのリック・ワゴナー最高経営責任者(CEO)は今週、国内自動車メーカーが破たんすれば、米経済の「壊滅的崩壊」を招くだろうと語ったが、同CEOはむしろ辞表を書いた方が良い。現在の情勢を考慮すれば、投資バンカーのボーナス見送り要求は納得できるし、正しいと思われる。ブルームバーグ・ニュースのデータによれば、ワゴナーCEOの07年の報酬総額は1440万ドルだったという。   
また、自動車業界に無制限の金融支援を行うべきだと政治家を説得するために用いられた、極端な表現を使った「警告」はどことなく脅しめいた感じがする。   
ワゴナーCEOは「米経済が被るすさまじい打撃は、自動車業界が必要としている政府支援の規模をはるかに上回るだろう」と指摘。「これは自動車産業の枠をはるかに超え、米経済の壊滅的崩壊からの救済にかかわることだ」と強調した。   
これは、われわれの望むものが与えなければ、その報いを受けるだろうと言っているのと同じだ。私には脅迫のように思える。   
ではどうしたら良いだろうか。ビッグスリー(米自動車大手3社)に直接雇用されている25万人の失業や、自動車関連産業の400万人が失業の危機に直面する状況は、オバマ次期大統領をはじめ誰も目にしたくはないだろう。   
自動車業界の人材を再教育し、気候変動など環境問題の専門家に育てる計画への支持は高まっているようだ。 200億ドル相当の資産運用に携わる、米クリアブルック・ファイナンシャルのトム・ソワニック最高投資責任者(CIO)は、「米政府が、自動車業界救済で提案されている250億−750億ドルを、エンジニアの再教育や、注目度の低い代替エネルギーのインフラや業務の支援に用いれば、より大きな恩恵が得られるのではないか」と指摘している。
5年後の楽しみ   
米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマン氏は今月初め、アップルのスティーブ・ジョブズCEOを説得して、「iCar(アイカー)」開発のため、自動車会社の経営を1年間任せるべきだと提案した。グッドアイデアだ。   米政府はまず最初に、年金と医療保険コストをすべて吸収するべきだ。こうしたコストを事業から切り離すことができれば、自動車メーカーの本当の財務状態が明らかになるだろう。   
その後、自動車業界全体を優れた経営者に委ねるべきだ。GMはジョブズ氏に、フォードはマイクロソフトビル・ゲイツ氏に、クライスラーは投資家のウォーレン・バフェット氏に任せようではないか。そうなれば、5年後にはアナポリスの駐車場の景観も大きく変わるだろう。(マーク・ギルバート)